『赤ひげ』千秋楽

明治座
11月12日 1階10列 上手側

 

舞台セットの見え方が下手上手でまったく違うなぁと幕が上がった直後に感じました。
上手側にある大店の一人娘が隔離されているセット、前回下手側だったときはそれが大きく感じ、彼女と世話をする奉公人が重要なポジションを占めているという象徴のようだった。(もちろん重要な役ですが)
ところが上手側の座席から見ると、そのセットは舞台の端に申し訳なさそうにちょこんと置かれているようでした。

女性の傷を縫合するシーンで保本登(新木宏乗)が暴れる患者に蹴飛ばされるところ
下手だとほぼ真横から見ているので、女性の脚が動くのが見えており保本に降りかかる災難が予測できた。
でも上手だと女性の頭部側から見ているので案外彼女の動きが予測不能になり、いきなり保本が横に吹っ飛んだ。
笑っちゃいけないシーンではあるけれど、口角が上がってしまいました。

最近、複数回観劇しても席が同じ側なことが多く、座席による見え方の違いを意識していなかったな。

赤ひげは一部の役をWキャストにしているのですが、2回観たことで両パターン観劇できました。
チョウジ(長屋に住む男児)役はどちらの子も巧かったな。今の子役さんは鍛えられていますね。舞台は日々進化していくので、演出家の言った通りにだけやっていれば良いわけじゃない。子役といえど、自分で考え、周囲の呼吸を感じなきゃやっていけない。凄い世界だ。

船越さん、初舞台とのことですが、声に厚みがありしっかり舞台用の発声をしていらっしゃいました。
サスペンスものドラマとはまったく違う貫禄ある医者でした。

新木さんの保本は最初がいけ好かない若造であればあるほど後半が生きてくるのですが、保本自身はけしていけ好かない男ではないのですよ。
当初の話しと違うこと、養生所の有り様が学んできたことと違うこと、今まで自分がしてきたこととのギャップに戸惑い、子供じみた方法でしかそれを表せない。
自分は優秀だという自信を折られたことを早々認めることが出来ないのは誰しもあること。
新木さんの保本は彼の戸惑いが出ていたなと思います。

前回も書いているかもしれませんが、江戸時代が舞台ですが、今も同じようなことが起きて、求められている。人として忘れてはいけないことを教えてくれるお話しでした。

2回目だけど、やはり泣きました。

カーテンコールに応える役者さんたちがとても晴れ晴れとした笑顔でした。

新木さん、崎山さん、髙橋さんを観るとどうしても青江~石切丸~蜂須賀~とどこかで思ってしまうのですが、今回はそれを思う間もありませんでした。

12月の大阪公演も無事に初日の幕が開きますように