『舞台 モノノ怪~座敷童子~』

 

原作:アニメ『モノノ怪』 
IMM THEATER 7列目下手寄り(東京ドームに出来た新劇場)

 

舞台 モノノ怪の第二弾
薬売りを再び新木宏典さんがやるということで楽しみに待っていました。しかも前回出演された方が今回も出るという。既存劇団の公演ならともかく、珍しいですよね。もはや劇団モノノ怪でしょうか。

大千秋楽、1回きりの観劇のためしっかり観なくては!
薬売りのカラフルなら出で立ちに合わせ、わたしもヘアカラーをカラフルにして参戦、グラデーションしちゃった。

座敷童子というだけあり、悲しいお話しです。でも救いもありました。
中盤くらいから女性のすすり泣きが聞こえました。わたしも終盤は泣いていました。

一般的に語られる座敷童子は、童子がいる家は栄えるというもの。
でもここに登場する童子たちは幸運をもたらさないと思うが、成仏できない可愛そうな魂たちです。

童子たちがいるのは旅館、しかし20年くらい前までは女郎屋だった。
察しがつくと思いますが、童子たちは女郎さんたちが堕胎した子供の迷える魂です。そして処置専用の部屋があり、旅館になった今では開かずの間として使用していないのですが、空きがない状況で妊娠している若い女性(志乃)がやってきて根負けした女将は「あの部屋」(開かずの間)を使うのです。

旅館にいる誰ひとり、童子たちの声にも姿にも気づかないのに、志乃だけは聞こえるし、見える。会話もなりたつ。優しい言葉をかけてくれた志乃に童子たちは懐いていき、その夜彼女を殺す依頼を受けた男が忍び込んでくるが、童子たちがそいつを殺してしまう。もちろん人の所行とは思えぬ殺し方で。

ここから本格的に薬売りの出番になるわけですが、前作と違い、薬売りが板上にいる時間が長い。前作では中盤付近まで登場しなかった。主役なのに。
今回はセリフがなくても、今、ここにいなくてもいい時でも薬売りは舞台のどこかにいる。リアルタイムの話しはほぼ開かずの間で展開しますが、薬売りは旅館のどこかにいるという風に廊下を歩いていたり、他の部屋(彼が通された客間?)で佇んでいたり、おそらく旅館で感じるモノノ怪の気配を辿っている。
薬売りの新木さんは舞台に存在していないようで、存在している。加減が絶妙。もちろん他の演者さんたちのお芝居が巧みだから。わたしの席の正面に薬売りが立っている時間もあったのに、まるでシルエットだけのような感覚だった。

舞台では座敷童子となって留まってしまった哀れな魂たちがなぜ留まってしまったのかが明かされていく。
子供はこの人が良いと自ら母親を選んで体内に宿るという説を取り入れた展開。
始末されてしまうときの叫び。
だからこそ薬売りの剣で光の中へ旅立っていくときの清々しさが生きる。

優しい光の中でしばらく過ごしたら、生まれ変われるといいねと願わずにはいられなくなる話しでした。